血球増多症・減少症
血球増多症・減少症

血液は、赤血球、白血球、血小板などの血球成分と、液体成分である血漿(蛋白質、脂質、糖質などを含む)から成り立っています。主な血液疾患には、血球の量や質に異常をきたす疾患、血漿中で血球が産生に関わる蛋白質(免疫グロブリン:Ig)に異常をきたす疾患、血液凝固の働きに異常をきたす疾患などがあります。これらの血液疾患は特徴的な症状が現れることもありますが、多くは自覚症状に乏しく、検診やかかりつけ医での血液検査値の異常が血液内科を受診するきっかけとなります。
血液内科でよくみられる症状は、貧血による息切れや脱力感、白血球異常に伴う発熱、血小板減少・血液凝固系異常による出血傾向などです。出血傾向がある場合には血が止まりにくかったり、皮膚に紫斑(しはん)と呼ばれる赤から紫色の色調変化が現れたりすることがあります。また、頸部(くび)・脇の下・そけい部(足のつけ根)のリンパ節が徐々に大きくなってきた場合や骨痛なども、血液疾患が疑われることがあります。これらの症状に心当たりがある方、検診やかかりつけ医での血液検査値の異常が指摘された方はお気軽にご相談ください。
血球の異常には「量的異常」と「質的異常」があります。量的異常は、赤血球、白血球、血小板などの血球成分が、異常に多くなったり、少なくなったりしている状態を指します。質的異常は、血球成分の量は十分であるにもかかわらず、各々の働きに問題があって総合的に機能低下をきたしている状態です。
赤血球減少
(貧血)
鉄欠乏性貧血やビタミンB12が不足して起こる巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)は、赤血球を造血する材料が不足することで赤血球が減少し、貧血を起こします。急性白血病では腫瘍細胞の影響によって赤血球の造血が十分できなくなり、再生不良性貧血は骨髄の造血能の問題が関わっています。このように赤血球減少は様々な疾患でみられます。
赤血球増多
(多血症)
赤血球増多は一般的に多血症と呼ばれています。血漿と呼ばれる液体成分が減少するために起こる相対的多血症と、実際に赤血球量が増加している絶対的多血症に分類されます。相対的多血症は、嘔吐や下痢などによる脱水で、血漿量が減少した見かけの多血症と、明らかな原因のないストレス多血症があります。ストレス多血症の特徴は赤ら顔で、肥満や高血圧が認められることが多く、喫煙をしている中年男性によくみられます。飲酒歴があることも少なくありません。
絶対的多血症は、二次性多血症と真性多血症に分類されます。二次性多血症は高地在住、慢性肺疾患、心臓疾患などで酸素不足をきたし、腎臓で作られる造血因子エリスロポエチンの濃度が上昇することで起こります。真性赤血球増加症(真性多血症)は赤血球が腫瘍性に増加した病態で、白血球や血小板の増加も伴います。脾臓(ひぞう)の腫大がみられることもあります。

白血球減少
白血球が低下する要因としては骨髄での造血能の低下や産生抑制、末梢血管や脾臓での破壊や消費の増加、白血球の分布変化などで起こります。骨髄での造血能低下には急性白血病、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など専門的な治療が必要な疾患があります。一方で末梢血管などでの破壊や白血球の分布変化などはウイルス感染症のように身近にある病気が原因で起こります。このように白血球減少には重篤な疾患から軽症なものまで様々なので慎重な対応が必要となります。しかし、体質的に風邪のようなよくあるウイルス感染症で白血球が低下する方もおられます。そのような方は風邪をひく度に総合病院を受診しなければならない負担が増えると可能性があります。白血球減少では重篤な病気の場合、生化学検査(特に肝機能や腎機能)で異常が出ることがあります。当院では生化学検査も院内で測定できますので、より正確に重篤なものかそうでないものかを評価することができます。もともと白血球が低めな方や検診で指摘された方はお気軽にご相談ください。
白血球増多
白血球増多には細菌感染に伴う二次的なものや、急性・慢性白血病、真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症などの腫瘍性疾患に伴うものがあります。こちらも白血球減少と同様に重篤な疾患から軽症なものまで様々です。当院では追加検査や病状の経過などから重篤な疾患かどうかある程度評価が可能です。検診やかかりつけ医の血液検査で白血球増多を指摘された方はお気軽にご相談ください。
血小板減少
血小板減少は感染症や肝硬変などで二次的に起こる場合や骨髄で血小板造血が不十分なために起こる場合(再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、急性白血病、薬剤性など)などがあります。また、自己免疫疾患(本来味方である血小板を、敵としてみなして攻撃してしまう疾患:特発性血小板減少性紫斑病)が原因で起こることもあります。明らかな出血傾向(歯肉出血、鼻出血、消化管出血、紫斑など)がなければ経過観察可能なこともありますが、追加で精密検査が必要な場合もあります。検診やかかりつけ医の血液検査などで血小板減少を指摘された方はお気軽にご相談ください。
血小板増多
炎症に伴う二次的なものと、慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症などの骨髄増殖性疾患によるものがあります。血小板増多では緊急性がある疾患は他の血球増多症や血球減少症に比べると少ないです。しかし、外来での定期受診や精密検査が必要になることがあります。検診やかかりつけ医の血液検査などで血小板増多を指摘された方はお気軽にご相談ください。
血球成分の量は十分であっても、各々の働きに問題があり、総合的に機能が低下している状態をいいます。疾患としては好中球機能異常症や血小板無力症などがあります。これらは非常に稀な病気です。また、急性・慢性白血病や多発性骨髄腫などの腫瘍も、広義では質的異常といえます。
血液の凝固には血小板、血管因子、凝固因子が関与しており、異常があると出血しやすくなります。原因は遺伝性と他の病気によるものに分かれます。遺伝性の代表は「血友病」で、血友病A(凝固因子Ⅷ不足)と血友病B(凝固因子Ⅸ不足)があります。主な症状は内出血で、特に関節内出血が多く、繰り返すと関節に障害が生じます。治療には欠乏因子を補充する方法が取られます。
血管因子の異常には、アレルギー性紫斑病や溶血性尿毒症症候群(HUS)があり、それぞれ副腎皮質ステロイドや血漿交換が有効です。また、播種性血管内凝固症候群など他の病気に伴う障害もあります。
一方、免疫異常による「特発性血小板減少性紫斑病」では、血小板が減少し出血しやすくなります。小児の急性型は自然治癒することが多く、成人では慢性型が多く見られます。主な症状は皮下出血や鼻血で、重症時には早急な治療が必要です。
